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点字民報 2022年3月号 通巻669号

2022年3月5日 更新

 目次と主な記事をお知らせします。

目次

(最高裁)あはき法19条は合憲
 …しかし、持続可能な視覚障害者の職業目標は語られていない
  19条裁判対策本部長 東郷 進
マッサージ師に国の主導で研修の機会を
  全視協19条裁判大阪担当 氏野富秀
東京・埼玉のみなさんに感謝
  全視協19条裁判仙台担当 依田澄子
手をつなごう要請行動報告
「緊急学習会」のご案内
  視覚障害者9条の会代表 入江正俊
旧優生保護法で強制不妊手術 初めて国に賠償命令
気になる、あはき・柔整療費検討専門委員会の議論
天海裁判控訴審第2回口頭弁論開かれる
全国委員会報告
  いしかわ くらじ
総務局コーナー
 1 DAISY-CDを頒布します
 2 憲法改悪許さない点字署名
 3 外装工事カンパ
 4 事業復活助成金
 5 頒布会 
全国と地域の主な予定

(目次、終わり)

主な記事

(最高裁)あはき法19条は合憲

…しかし、持続可能な視覚障害者の職業目標は語られていない

19条裁判対策本部長  東郷 進

 22年2月7日15時2分、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は、福島医療専門学校、横浜医療専門学校、平成医療学園、宝塚医療大学鍼灸学科の、あマ指科の申請を非認定とした処分を取り消し判決の差戻しを求める3件の訴えを退ける判決を言い渡しました。

 「主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。」に始まり、理由の要旨に至る時間はわずか5分。

 入手できた判決文の横浜医療専門学校の裁判は、16年9月28日の東京地裁に始まり、東京高裁までの17回あり、裁判記録は電話帳4冊分になりましたが、最高裁の判決文は僅か9657字でした。未だ仙台高裁と大阪高裁分の判決は入手できていません。

 14時過ぎ、「57人の傍聴希望者がいます」と最高裁が参加者に告げました。原告側とおぼしき参加者がいつもより多く見受けられましたが、全視協の参加者は今回も1番多く29人でした。

〔判決要旨〕

 あはき法第19条1項は、64年の国会において、視覚障害者以外の者のため職域を圧迫される傾向が著しい状況にあるので、あマ指師について視覚障害者を優先する措置が講じられた。

 19条1項は、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であるとの立法府の判断が、その政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理であることが明白な場合でない限り、憲法22条1項の規定に違反するものということはできない。

 視覚障害者は、その障害のために従事し得る職業が限られ、一般的に就業率も高くないところ、あマ指師は、19条1項の施行以前から、その障害にも適する職種とされ、その多くが職業として就いていた。その後、視覚障害者のうちあマ指師の数及びその割合は減少傾向にあるものの、本件処分当時においても、あマ指師は、視覚障害者のうち相当程度の割合の者が就き、また、その障害の程度が重くても就業機会を得ることのできる、主要な職種の一つであるということができる。現に、あマ指師は、障害者の雇用の促進等に関する法律により、所定の視覚障害者に係る特定職種(労働能力はあるが障害の程度が重いため通常の職業に就くことが特に困難である身体障害者の能力にも適合すると認められる職種)として定められている。その一方で、あマ指師のうち視覚障害者以外の者の数及びその割合やあマ指師に係る養成施設等の定員のうち視覚障害者以外の者の割合は増加傾向にあり、また、あマ指師のうち視覚障害者の収入はそれ以外の者よりも顕著に低くなっている。

 これらの事情に加えて、視覚障害者にその障害にも適する職業に就く機会を保障することは、その自立及び社会経済活動への参加を促進するという積極的意義を有するといえること等も考慮すれば、視覚障害者について障害基礎年金等の一定の社会福祉施策が講じられていることを踏まえても、視覚障害者の保護という重要な公共の利益のため、あマ指師について一定以上の障害がある視覚障害者の職域を確保すべく、視覚障害者以外のあマ指師の増加を抑制する必要があるとすることをもって、不合理であるということはできない。 よって、裁判官4名全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官草野耕一の意見がある。

 裁判官草野耕一の意見は,次のとおりである。(略)

 裁判で争われた視覚障害者の事実は、最高裁が認めました。しかし、19条1項の他、SDGs(Sustainable Development Goals.(持続可能な開発目標)ならぬ、視覚障害者の持続可能な職業目標についての答は何も語られていません。

 19条裁判後の自由な意見交換と運動再構築の場をオンラインで開催したいと考えています。なお、会計報告について早急にまとめており、近く報告出来ると思います。

(この稿、終わり)

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