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点字民報 2020年9月号 通巻651号

2020年9月1日 更新

 目次と主な記事をお知らせします。

目次

落ちない駅ホーム早く、JR阿佐ヶ谷駅点検
 山城完治(東京)
コロナ禍における視覚障害者の雇用・就労
 田中章治(東京)
チャレンジ賞を受賞した
 神奈川視覚障害者の生活と権利を守る会
 会員の齋藤健二さん
黒岩瀧市さんを偲ぶ会が開かれました
 滝 修(東京)
社員の会報からエッセーのご紹介
 平和な世界を!
  安藤 實
 いびつな9年間を私たちは過ごしてきた
  桑原正史
総務局コーナー
 1 事務所外装工事8月末完了
 2 頒布会から 
全視協ハイライト 
 全視協と友好団体・関係裁判の主な予定(9月・10月)
東西南北 山梨 福岡

(目次、終わり)

主な記事

コロナ禍における視覚障害者の雇用・就労

田中章治(東京)

最近の視覚障害者の雇用・就労をめぐる状況

 9月は、「障害者雇用推進月間」に当たります。本論に入る前に最近の視覚障害者の雇用・就労をめぐる2つの話題について触れます。

 (1)先ごろ、令和元年度のハローワークにおける視覚障害者の職業紹介状況が発表されました。以下は抜粋です。単位は件数・カッコ内は%の順に記載。
 ①新規求職申込件数 4,727(対前年比 -0.7)うち重度 2,769 (対前年比 -0.4)
 ②有効求職者数 7,732(対前年比 5.5)うち重度 4,673 (対前年比 6.8)
 ③就職件数 1,931(対前年比 -5.3)うち重度 1,124 (対前年比 -3.7)
 ④就職率(③/①) 40.9(対前年度差-2.0)うち重度  40.6 (対前年度差-1.4)
 主な職業別就職件数
  専門的・技術的職業 855人、うち重度657人
   うちあんま・鍼・灸・マッサージ 682人、うち重度546人
   うち福祉施設指導専門員(機能訓練指導員等) 61人、うち重度 41人
   うち理学療法士 21人、うち重度 13人
   うち情報処理・通信技術者 7人、うち重度 4人
   うちその他 91人、うち重度 57人
  事務的職業 317人、うち重度156人
  サービスの職業 186人、うち重度 90人
  運搬・清掃等の職業 410人、うち重度164人
  ※ヘルスキーパーについては、集計作業中で未確定とのことです。

 まず言えることは、視覚障害者の就職件数がここ数年減少傾向にあり、これは厚労省側の怠慢と断ぜざるを得ません。また、あはきについては機能訓練指導員やヘルスキーパーを加えると、重度では約60%を占めていることがわかります。

 (2)厚労省は19年7月「障害者雇用・福祉連携強化プロジェクトチーム」を省内に設置し、検討を続けてきました。そして、課題の一つ「通勤や職場等における支援の在り方」で二つの具体的施策を20年度10月から始めることになりました。一つは、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の拡充策です。もう一つが市町村が実施主体となる地域生活支援事業の「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」です。国が示した同事業の実施要領案によると、「企業が重度障害者を雇用するにあたり、障害者雇用納付金制度に基づく助成金を活用しても雇用継続に支障が残る場合や、重度障害者が自営業者等として働く場合において、市町村が必要と認めたときに通勤や職場等での支援を行う。」となっています。

 事業の詳細はまだ不明ですが、自営業者への支援が打ち出されていることは画期的で、今後の施策の動向を注視する必要があります。

コロナ禍の視覚障害者の雇用・就労への影響

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、働く視覚障害者にとって多方面で大きな影響を及ぼしているように思います。まず、厚労省が7月31日に公表した資料によると、障害者の解雇は1104人(本年2月~6月期)で、前年同期より152人増えているとのことです。私たちの周辺でも訪問マッサージ師やヘルスキーパーなどで解雇事例が見受けられます。そこで、ここでは各職種について、私が聞いた範囲で影響をまとめてみました。

  あはき自営業

 コロナ禍で自粛やステーホームの影響をもろに受けているように思います。何といっても訪れる患者が激減しています。そんな中にあって、「点民」誌上で紹介のあった、事業主に対する「持続化給付金」の申請の成功例の報告は大変励まされます。

  ヘルスキーパー

 早い人は3月から、多くは緊急事態宣言が出された4月上旬から、自宅待機を余儀なくされています。この間の給料が支給されているのがせめてもの救いとなっています。しかし、長期間職場を離れているための技術の低下に対する心配や、解雇されるのではないかなどの雇用不安があります。一方、業務が再開され職場でお客を待っていても、ほとんど仕事がない状態の人もいます。

  特別養護老人ホームやデイサービスでのマッサージ師
 出勤日数の調整や時間短縮はなされているものの、基本的には勤務は続けられています。

  事務職

 東視協会員のHさんの場合は、この間、自宅待機、出勤、テレワークと、勤務体制が目まぐるしく変わりました。パソコンなど、作業環境をその都度整備するのに苦慮しました。最近は自宅でのテレワークがメインとなっているようですが、厳格な拘束時間、職場とのコミュニケーションの取りづらさなど、意外にストレスが多いようです。

  通所施設などで働いている視覚障害者

 雇用関係はありませんが、「就労継続B型」などの通所施設で働く視覚障害者の場合、密集や密接を避ける意味から交代で通所している例が多いようです。結局、通所の日数が減り、工賃の支払いが日割り計算のため、支給される工賃は減額されます。これは、あはきを目的とした「盲人ホーム」などでも同様のことが言えます。一般の休業補償のように、減額された工賃を保障するような公的支援制度が必要だと思います。

終わりに

 私はこのところ、会員のお供で時々ハローワークに足を運んでいます。しかし、視覚障害者の求人は極端に少なくなったように感じています。コロナ禍で我が国の雇用・就労・福祉対策の制度上の脆弱性が露呈されているように思われます。この機会に障害者権利条約の基本理念に立ち返り、コロナ後の新たな制度設計を求めていく必要があります。

(この稿、終わり)

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