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点字民報 2020年6月号 通巻648号

2020年6月14日 更新

 目次と主な記事をお知らせします。

目次

コロナ対策で持続化給付金100万円もらいました
 ―解雇で社宅をなくした会員にホテル3ヶ月間用意も―
 東郷 進(東京)
新連載① 耳で聞く絵本
 須加 栄(石川)
改正バリアフリー法案に、衆議院国交委で意見
 代表理事 山城完治
お家でできる役立ち情報
 1 電話で送金 ― ゆうちょダイレクト
 2 電話会議システム
新入会員 川淵結絵さん(岡山)
黒岩瀧市さんを偲ぶ
 田中章治(東京)
 清水健男(神奈川)
総務局コーナー
 1 HPの感想をお寄せください
 2 19条裁判判決頒布
 3 理事の取り組み
全視協ハイライト - 全視協と友好団体・関係裁判の主な予定(5~7月)

(目次、終わり)

主な記事

新連載① 耳で聞く絵本 須加 栄(石川)

 須加栄さん 1942年大阪市生まれ。石川県の山中温泉で育つ。5年間、蒔絵師(まきえし)になるための修業。金沢大学教育学部に在籍し、演劇その他の文化活動に邁進。1年かけて鑑賞団体「金沢労演」を立ち上げ、事務局長の仕事をしながら、演劇づくりや絵画に打ち込む。40歳の時、東京の二紀会公募展に出展し、初出品初入選。1989年よりアカネ不動産社長、現在会長。約10年前より急激な視力の衰え。2015年より全視協会員。現在、石川視生会副会長。趣味は読書、演劇鑑賞、作曲など多彩。 (不破伸一)

色彩の喪失

 私は77才、10年前から緑内障による障害2級の視覚障害者となり、眼科に通い点眼などをしていますが日に日に見えにくくなってきています。

 大好きな油彩画が全く描けなくなり、今では展覧会に足を運ぶのさえ億劫になっています。でも、東京で見たフェルメールの[真珠の耳飾りの女]の鮮やかな色彩は忘れることが出来ません。真っ赤に熟れた唇、瑞々しく輝く潤んだ瞳、翳りの中で照り映えるアイボリーホワイトの大きな真珠、それに、何と言っても絶妙な色彩のハーモニーに裏打ちされたブルーのターバン、それは高価な宝石ラピスラズリが放つブルーの輝きです。私はすっかり魅せられてこの絵の虜となりました。

 あー、残念だなあ、どうしても見たい絵画や彫刻があるのに。ラファエロやレンブラント、セザンヌやモネー、それに鈴木其一や岡田三郎助も見たいなあ。そうこうしているうちに相撲のテレビ観戦も今では妻の眼に頼るしかありません。ものを見ようとする意欲さえ減衰するばかりです。  ところが最近になって物の形や色彩に強いこだわりが生まれてきたのです。それはある長閑な午後のことでした。視覚障害者数人で談笑していた時のことです。話題が絵画に及び、好きな伊藤若冲のことに集中し、話しはいつになく盛り上がり、若冲の色彩の妙について花が咲き、座はとてもいい雰囲気になってきました。

 ところが、佳境になって、1人の女性が声を詰まらせ、突然に涙声で、「悔しい」と唸るように叫んだのです。どうしたのでしょう。「私はね、失明してから10年以上経つんだけど、最近はめっきり色彩と言うものに疎くなってしまったの」と、彼女は吐き捨てるように言いました。「えっ、どういうこと?」、「あのね、色の区別が分からなくなってしまったのよ」、「私の頭には色彩感覚が無くなってしまったのか、赤と言っても、青と言ってもその色が浮かんでこないのよ。」と。これを聞いてその場は絶句しました。彼女のこの言葉を聞いてから私はとても不思議な、そして不安な気持になりました。私も失明したらあのフェルメールの色彩が頭から消えてしまうのか。これはとてもショックです。その後、憂鬱な日々が続き、ありのままを受け入れるのに時間がかかりました。そのうちに私は踏ん切りをつけ、冷静になって色々と考えを巡らすようになりました。(つづく)

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