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全視協第36回奈良大会 大会宣言

2023年6月18日 更新

 飛鳥文化、天平の文化を生んだ歴史あるこの地・奈良に、全視協会員と関係者が集まり、私たちは全日本視覚障害者協議会第36回大会を開きました。コロナ禍を超えて、福岡大会以来4年ぶりの待望久しい開催です。これまでの全視協大会の中でも一際多くの困難や悪条件にさらされながらも、全視協運動の意義を確認し、開催に向けて組織をあげて準備してくれた、奈良の「守る会」の仲間たちの熱意と英断によって実現できたものです。会場の参加者はもちろん、ここに代表を送り出した全国の各組織と会員から、心よりの賛意と謝意を表します。懐かしい姿との再会、初参加の人の声…。以前なら当たり前だと感じていた、直接会って交流できることが今、ことさらに新鮮に感じられます。

 この4年間のほとんどは、社会を震撼させたコロナ禍のもとでの活動でした。感染による入院や療養、普段にも増しての生業の低迷、生活や外出の制限、さらには、人との距離を保って行動すること、誰かに介助を依頼することなど、どの場面においても視覚障害者は、予測を超えた困難に直面し、抜き差しならぬ立場に追い込まれました。

 しかしそんな中にあっても、全視協は知恵を集め、連帯して、運動を続けてきました。殊に、あはき訴訟に際して、広く署名に取り組み、各法廷での傍聴に毎回参加し、運動をリードして、最高裁での勝訴を実現させたことは、最大の成果です。また、読書のバリアフリー、情報のアクセシビリティ、差別禁止など、障害者の社会参加と人権確立に向けて「手をつなごう集会」を中心に、国や自治体への要請行動に取り組み、柱となる法律の整備に力を尽くしました。これらの成果を活かし、条例や施策に具体化させて、内容と効力をいっそう充実していくことが課題です。

 一方、コロナを契機として社会では非接触型、リモート式、無人化などの仕組みが進んでおり、これら「目で見る」効率本意のシステムは視覚障害者への新たなバリアとなっています。さらに、ウクライナへの武力攻撃に乗じた軍拡と大増税が画策され、軍需産業の膨張と引き換えに、私たちがこれまで積み上げてきた福祉制度を切り崩す動きが加速しています。

 この3日間の大会では、昨日一日をかけての社員総会で、2年間の運動を総括し、直面する課題を討議し、新たな方針を確認しました。今日午前の6つの分科会で、福祉・就労・まちづくり・デジタル化・平和について討議し、国連障害者権利委員会の所見を学びました。そして先ほどの記念講演で、奈良時代の民衆の暮らしを知り、昨日のツアーで古代の出土品に触れ、歴史を学びました。初日の文化行事では、会員有志の演技に感動し、昨夜の夕食懇親会で交流を深めました。

 結成56年に至る全視協は、社会の人口構造に相応して、高齢化による生活の困難や健康の課題を持つ会員も増え、運動参加への制限から不本意にも一線を退く人もいます。ついに活動の存続が不可能になった組織も出たことを直視し、役員と社員、会員相互の連携を強めていかなくてはなりません。

 奈良公園には約1200頭の鹿がいると言われます。殊更ここに数をあげる理由はありませんが、意識はしたい。今こそ会員が一頭の子鹿になって、一人ぼっちの視覚障害者をなくし、仲間に迎えましょう。協力者・支援者の輪を広げましょう!

 そして誰もが各年代の市民として誇りを持ち、豊かな暮らしを創造していけるよう、障害種別を超えた団体や広範な市民運動と連帯して進んでいくことを確認し、ここに宣言します。

2023年6月18日
一般社団法人 全日本視覚障害者協議会
第36回奈良大会