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点字民報 2023年3月号 通巻681号

2023年3月5日 更新

 目次と主な記事をお知らせします。

目次

特集 視覚障害者の雇用状況を概観する
   初めて民間企業の障害者部位別雇用状況公表 工藤正一(千葉県)
全視協第14回(定時)社員総会役員選挙が告示されました
視覚障害者9条の会 総会と集いが開かれました 北嶋 誠(茨城県)
連載 見えない子たちとともに12 どんな時も、時代を切り開きながら 江口美和子
総務局コーナー
 1 全視協発行の点字民報
 2 点字署名のお願い
 3 頒布会
全国と地域の主な予定
東西南北
 ほっこりサロン
 にぎり寿司体験も

(目次、終わり)

主な記事

連載 見えない子たちとともに12 どんな時も、時代を切り開きながら

江口美和子

 この連載も最後になりました。この1ヵ月、最後にはどんなことを書こうかと悩んでいました。でも、子どもたちと一緒に、子どもたちの未来のために、たくさんの人たちと連帯してきたことを書こうと思います。

 私が埼玉の盲学校に赴任したのは1972年の2月1日でした。まだ、大学4年生でしたが、免許取得見込みで常勤講師でした。なぜ年度途中の採用かというと、前の年の11月に幼稚部と小学部・中学部の重複学級が設置され、2月には小学部の重複学級増があり、私が赴任することになったのでした。

 それまでは障害の重い児童・生徒は教育の対象とされず、「就学猶予」「就学免除」となっていました。養護学校の義務制は1979年です。盲学校の対象であっても学校に入学していない子どもたちがたくさんいました。

 全盲のヤマちゃんは、妹が作文に、「お兄ちゃんは、障害があるから学校に行っていない」と書いたのをきっかけに入学してきました。「茶飲むのー」は、ヤマちゃんの要求でした。ノンちゃんは、麻疹が原因で見えなくなりずっと家にいました。訪問の先生が盲学校に連絡されて、入学を決めました。ノンちゃんも全盲で表情が無く、じっと座っていて岩のような感じの子どもでした。でも、おんぶして校庭を走ると笑顔で声を出して笑うのです。いっぱいおんぶして走って、私は腰痛になりました。ケイコちゃんは「ヤクルト飲むのー」と言い、甘い飲み物で歯が溶けていました。でも、だんだんいろんな物を食べるようになり、「お家帰るのー」と、お迎えを心待ちにするようになりました。アキラくんは、学齢になっても家にいました。体も小さくて眼がギョロギョロしていました。言葉もあまり話さず、出されたお菓子をむさぼるように食べていました。そんなアキラくんが給食をしっかり食べ、歌が大好きになり『北国の春』が十八番になりました。

 家から出たことがなかった子。入学まで靴が無かった子。18歳まで家にいて、歩くことも大変になっていた子。様々な子どもたちに出会い、そんな子たちが学校に入学してきました。そして、どの子も「発達」して卒業していきました。学校は、子どもたちにとってそんな大事な場所なのです。

 盲学校の重複学級認可、養護学校義務制。どれも、子どもたちを真ん中にして、保護者、教職員、地域の人たちと運動して切り拓いてきた道です。

 さあ、今私たちは何をすべきなのでしょうか。

 2007年に特別支援教育となり、何が花開き、何が課題となっているのでしょうか。ここではその一つひとつを語ることはできませんが、私が今一番危惧していることは、盲学校の統廃合問題です。児童生徒減少の中で全国的に統廃合が進んでいます。大学の関係者、研究者の間でも、歯止めをかけることは難しいと言われています。視覚障害教育はその教育がされなければ担保されません。では、どうしたらいいのか。みんなの知恵を出し合っていこうではありませんか。そして、この誌上でも皆さんで論じ合っていきましょう。

(この稿、終わり)

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