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点字民報 2023年1月号 通巻679号

2023年1月5日 更新

 目次と主な記事をお知らせします。

目次

社告 今年も元気に仲間と力合わせて 代表理事 山城 完治
全視協テーマ別集会「同行援護」のご案内
視覚障害者9条の会の総会と集会のご案内 入江正俊
全視協第36回奈良大会の件 現地実行委員長 島田陽子
卯年を迎えて 岡 真澄(埼玉県)
 我が家のおせち 稲葉明美(大阪府)
 火が好きな訳ではないけれど 盛内克則(岩手県)
天海裁判終結
連載 見えない子たちとともに10 親は、一人の人間としての人生を生きる その1 江口美和子
頒布会
全国と地域の主な行事

(目次、終わり)

主な記事

卯年を迎えて

岡 真澄(埼玉県)

 長引くウイルスと戦火の中で、世界がすさんだまま年が明けました。「平和の祭典」と言われるオリンピックも、東京への招致の段階から利権に群がる運営が明るみに出始めたり、北京の冬季パラリンピックの直前に侵略戦争が始まったりするなど、国際協調やフェア精神を蹴散らすような惨劇が続いています。

 うさぎは温和で親しみやすく世話が簡単なのでコロナ禍の在宅生活に適するからと、飼い始める人が増えているようですが、今年その出番が回ってきた彼らは、いったいどんな思いで、人間模様の愚かさを眺めているのでしょう。

 ウサギ科は大きくノウサギとアナウサギに分けられ、広く世界に分布しています。長い耳を音源に向けてかすかな音を聞き分けることができ、顔の外寄りにある両目の広い視野で絶えず周囲を警戒し、長い後足で上り坂でも速く走れます。まさに「脱兎の如く」です。

 地元の県立動物自然公園で飼育員さんにうかがうと、「園内の小動物エリアで約30頭のアナウサギを飼育しています。キャベツやニンジンなどのほか、前歯が伸びすぎないよう硬さと栄養に配慮したウサギフードも与えます。なわばり本能が強いので、飼育空間が狭いと同性同士は毛をむしり合ったりかみついたり、争いが起こりやすいし、反対にオスメスが近いと旺盛な繁殖力ですぐに個体数が増えてしまいます。なので、個性や成長度などを考慮しながらペアリングするようにしています。昼は広場のふれあいコーナーにも出しますが、夜間に園外から侵入するヘビやキツネやアライグマに食われないよう、施設管理に努めています。」などと説明してくれました。

 奄美の黒兎(アマミノクロウサギ)は奄美大島と徳之島にいる固有種で、国の特別天然記念物ですが、マングースや野犬による捕食、ゴルフ場開発などで減少し、今はIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにあげられています。

 『うさぎとかめ』『因幡の白うさぎ』『あわて床屋』などは誰もが知るお話で、それらの童謡もすぐ歌えそうですね。うさぎが地下の世界を案内する『不思議の国のアリス』や、湖水地方を舞台とする『ピーターラビット』の絵本シリーズは共に100年以上前に描かれ、今も世界で読まれるイギリスの児童書です。

 日本で児童文学を書き、温かい歌を多くつくる新沢としひこは、1963年生まれ。ピアニストの仲道郁代も、ドイツのバイオリニスト、アンネ=ゾフィー・ムターも今年還暦です。

 一方、メモリアルの没後50年に当たるのは、チェリストのパブロ・カザルス、画家のパブロ・ピカソなどで、共にスペインのフランコ独裁政権に強く反対し、芸術と平和を追求しました。

 さらに今年没後100年に当たるのは、レントゲン、大杉栄、伊藤野枝がいます。レントゲンが確立したX線による画像診断は、100年後の今もなお、有力な医療技術として世界で活用されています。

 日本ではその年、9月1日に関東大震災が発生。大きな被害とともに社会不安から流言飛語が広がり、亀戸事件・王希天事件など、地域で暮らしていた多くの朝鮮人・中国人たちが相次いで惨殺されました。さらに労働運動・市民運動も弾圧され、まだ20代・30代だった大杉栄、伊藤野枝も、憲兵隊に虐殺されました。その頃から軍部の権限が強まっていったことを考え合わせると、今の国の動きやフェイクニュースの重大さにもっと注視しなくてはと思います。

 荒れた世界の不穏な一年を見守ってきた虎から、干支を引き継いだ兎といっしょに、軍事大国化ではなく、誰もが穏やかに生活していける社会になるよう、今年も障害者の視点ならではの運動を積み上げていきたいものです。その最大の教訓となるのは、約6年間に及ぶ「あはき裁判」に、全視協が総力をあげ、障害者団体の立場を超えて、一つの目標で共闘し、昨年ついに最高裁でも勝利したことです。今年またいくつもの難題が予想されますが、重大さを見きわめ、優先すべき一点に集中して取り組んでいきましょう。一人が同時に二つの課題を追わないよう、分担し合いながら…。

(この稿、終わり)

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