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点字民報 2021年4月号 通巻658号

2021年4月1日 更新

 目次と主な記事をお知らせします。

目次

新連載 愛すべきスペイン(1) 庶民は勤勉、酒好き
  嵯峨野 新次(東京)
2020年度 第2回全国委員会報告
コロナ禍で奮闘する訪問マッサージ従事者 加藤 厚実(東京)
定期総会 オンラインの参加も 牧之瀬 初音(福島)
盲学校教師として生きる 都築 綾子(高知)
母子健康手帳は、当事者が一番使いやすい媒体で『交付』を! 濱田 登美(神奈川)
声明 国に、生活保護減額を違法とした大阪地裁判決に従い控訴を断念し、制度を改善することを求める
総務局コーナー
 1 事務所外装工事カンパ
 2 核兵器禁止条約点字署名
 3 頒布会 
全視協ハイライト - 全視協と友好団体・関係裁判の主な予定

(目次、終わり)

主な記事

新連載 愛すべきスペインン(1)庶民は勤勉、酒好き

嵯峨野 新次(東京)

 嵯峨野新次さん 本誌2021年2月号でご紹介した東京の新入会員、嵯峨野さんにスペインでの3年間の生活について書いていただきます。

 僕がスペインへ行ったのは、今から35年前、中途失明者になることが判明した時でした。

 そのころ、毎日酒を飲んでいて、カミさんも出ていき、今後のことを考えるのがめんどくさくなっていました。

 そんな時に友人に勧められて1人で行ったのが始まりでした。友人は、「スペインは酒が安いよ」と、その一言が利きました(言葉も全く分からずに)。

 スペインという国は日本と共通することがたくさんあり過ごしやすかったのと、素晴らしい友人に恵まれたことで、3年近く暮らすことになってしまいました。

 スペインでは視覚障害者が街に出て「宝くじ」を売る仕事をしていました。これはスペイン人に言わせると、フランコ将軍が決めた唯一の良いこと、であるそうです。

 だから都市部の街中で大きな声を出して売り子をしていました。そのころ見た白杖は水道管を白く塗っただけの重たい物でした、それを少し持ち上げて地面に落として音を立てながら声を出していたのを覚えています。

 文化の違いはそれほどなかったと思います。ただスペイン人は中国人を非常に嫌っていました。その分日本人だとわかるととても親切にしてもらった記憶があります。

 朝早くから電車に乗って会社に行く風景は日本と同じでした。ただ昼のシエスタは飲食店以外すべて休みになるので非常に不便でした。唯一デパートだけは開いていました。

 向こうで少しだけ仕事をしたことがあり、その時に社長さんと紹介してくれた友人と3人で昼食の時にワインのボトルを3本空けたことがありました。しかし、電車の中でも街でも「酔っぱらい」を見たことがありませんでした。「アルコール分解酵素があるので酔わない」と聞きました。他のヨーロッパやアメリカでも「酔っぱらい」は見たことがありません。

 マドリードはあまり雪も降らず冬でも野菜を売ってます。魚屋もあるのでサバを買って干物を作りご飯と一緒に食べてました。BAR(バル)と言う酒を飲める喫茶店のような所を毎日利用していました。朝はほとんどの勤め人が近所のBARでコーヒーとパンで済ませます。その時に強い酒をショットグラスで飲む男性をよく見かけました。「マリスケリア」という魚介類の店や生ハム屋さんなどは、日本にないのでよく行きました。

 シェリー酒専門店もあります。当時は治安もよかったので日本人経営のBARに集まって夜遅くまで飲んでました。

 文化の違いとしては、美術館や博物館が自国民に対しては安くて観光客から高額を取る制度になっていました。弱い者には優しく、金持ちからは沢山取る考えと思えました。夏休みは長いと言うけれど、庶民は日本と同じで皆勤勉に働いていました。家族愛が強く、友人のスペイン人の奥さんの実家に呼ばれたときは、親戚がたくさん集まり長い時間をかけて食事をしました。他人の僕にも親戚のように優しく接してくれたのが印象的でした。

 あの3年間があったから、障害に対する恐怖や将来に対する絶望も、どうにかやり過ごすことが出来、帰国後は休学していた盲学校に復学できました。

 それから現在までに20カ国くらい旅行をしています。年々目が悪くなる中で、現地の人と接することを楽しみにしています。新型コロナが終息したらまたいろいろな国に行きたいです。

(この稿、終わり)

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