エンター すると 本文に 移動します

福祉の提言

2020年9月10日 更新

(日本国憲法を守り広げ、視覚障害者の福祉と介護が権利として保障される社会をめざす骨格提言)

※全視協結成50周年記念第33回神奈川大会(2017年5月27日)にて第4次案提案、および全国委員会(2017年9月17日)にて第5次案提案、成立。

目次

はじめに
第1章 視覚に障害を有する人の範囲と人数
 第1節 視覚障害者の範囲
 第2節 不自由
  1 情報障害
  2 移動障害
  3 就労
  4 災害
第2章 社会保障の課題
 第1節 制度の実態
  1 介護保険
  2 障害者総合支援法
  3 地域包括ケア
 第2節 そこから起こる課題
 第3節 視覚障害者にとっての福祉介護の65歳問題
  1 65歳になった時の課題
  2 65歳以降も続く課題
  3 質的な課題
  4 取り扱い通知と事務連絡
 第4節 根本の問題
第3章 視覚障害者の権利としての介護・福祉を守り進める大作戦
 第1節 基本方針
 第2節 当面の要求の骨子
  ・介護保険制度および障害者総合支援法
  ・契約
  ・計画作成および専門性
  ・認定および専門性
  ・同行援護
  ・移動保障
  ・総合支援法施設
  ・施設入所及びグループホーム
  ・介護保険と専門性
  ・情報保障
  ・日常生活支援総合事業
  ・災害
  ・地域マンパワー
  ・リハビリテーション
 第3節 実現に向けての運動
おわりに

(目次、終わり)

はじめに

 中途視覚障害者の増加、やってくる大介護時代、その中で国は「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現」(注①)と称して、横断的に社会保障を切り崩そうとしています。
 2014年には障害者自立支援法が名前を変えた「障害者総合支援法」がスタートするとともに、2015年には介護保険法が「改正」されました。
 一方我が国は、障害者の権利に関する条約を2014年1月に批准し、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が2016年4月に施行されました。
 このように、視覚障害者をめぐる福祉と介護は前進と後退の波が激しくぶつかり合っています。
 私たちは世界の障害者に関する権利の動向を学びながら、福祉・介護の公的責任外しと闘い、憲法25条の理念の実現を強く求めていく必要があります。
 そして、軍事路線に反対するうねりを巻き起こし社会保障確立への行動を起こそうではありませんか。
 私たちは、国民との合意を得ながら視覚障害者の福祉と介護の権利を発展させる為、ここに提言します。

第1章 視覚に障害を有する人の範囲と人数

第1節 視覚障害者の範囲

 身体障害者福祉法による視覚障害の認定は、視力・視野を基準としており、約34万人(2015年)と推計される一方、2007年の日本眼科学会の推計では、今後急速に増え、近々2百万人になるという値も出ています。また、2011年の出版UD研究会関係者の推計値では「読みや見えの障害の人は約1100万人」とも言われています。
 このようにひと口に視覚障害と言っても、生活、情報入手、社会参加、就労の観点でみると様々な面があります。
1.発症年齢では、中途による障害の人が急速に増えており高齢化が進んでいます。
2.視力、視野のみならず、夜盲、羞明、眼球振盪、色覚障害(色盲・色弱)、片目の障害などその範囲は多様です。
3.視覚障害リハビリを受療しているかどうかの差もあります。日常生活、歩行、点字、パソコン、スマホの利活用も大きな要素になっています。
4.視覚障害と他の障害を伴う重複障害者が多くなっています。
①盲ろう障害者は視覚障害としての対応と聴覚障害としての対応がそれぞれ進めば解決するものではなく、新たな「盲ろう」としてのカテゴリーによる保障が必要となってきています。
②低年齢で発症する視覚障害の人は重複の障害の方の割合が多くなってきています。

第2節 不自由

 視覚障害者の三大不自由は、読み書きの障害、移動の障害、就労・社会参加の障害といわれます。それらと共に、大きな不安は「災害」です。
1 情報障害
 日本点字が制定されて120年以上が経ちます。また最近、中途視覚障害者の増加及びパソコン技術の発展によって、視覚障害者をめぐる情報環境は大きく変わってきました。
 1.点字…ピンディスプレイ・点字プリンター等パソコンによる入出力、インターネット送受信が可能になり、利用範囲が拡大しています。
 2.大活字…拡大写本・大活字出版に加えて、拡大読書器、パソコン利用による字体、文字サイズ、背景色の設定も可能になりました。
 3.音声…録音テープに代わり、デイジー録音の利用が多くなってきています。
 4.著作権…著作権法の改正により、点字図書館以外の図書館等でも視覚障害者へのテキストデータ等の提供が可能になりました。この背景には、糖尿病などの重複障害・高齢化等により、点字を習得できない視覚障害者が増加しているからです。視覚障害者の点字習得率は10%とも3%ともいわれ、2014年の衆議院院選挙での点字投票数は7775票でした。重複障害の人の増大により、マルチメディアデイジーやLLブックなど、多くの媒体を使った伝達方法も必要になってきています。
2 移動障害
 点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)や音響信号機は増えてきていますが十分ではありません。また、歩道と同色の紛らわしい点字ブロック、音響信号機・音声誘導チャイムの音の制限、静音車の増加など新たな問題も広がってきています。
 また、プラットホームからの転落・死亡事故はあとを絶ちません。(注②③)
3 就労
 かつては、視覚障害者の専門職種として「あんま鍼灸」と言われていました。
しかし、晴眼業者の増加、無免許者の存在、医療機関での理学療法士の進出により開業や雇用の確保が難しくなっています。(注④)
 また、あんま鍼灸以外で見ると、パソコンを使った就労は一部であり、視覚障害者が自由に職業選択できるものではありません。
4 災害
 東日本大震災での障害者の死亡率は一般の2.1倍と言われています(障害者制度改革国民会議)。また、助かった視覚障害者の1年後死亡率が8%以上で一般の方と比較して高い数値の報告があります。(日本盲人福祉委員会調べ)
 このように非日常の生活は視覚障害者にとって極めて過酷な状況と言わざるを得ません。

第2章 社会保障の課題

第1節 制度の実態

1 介護保険
 政府の狙う改悪により、介護が商品化され様々な問題が生じています。措置制度から福祉の利用契約制度に代わり、自己責任の考え方が押し込まれています。
 2000年に始まった介護保険法は、要介護認定が厳しく判定されてきています。利用者・重度者の増大によって保険料も上がってきています(2015年の平均基準額は5514円)。
 要介護認定では、全盲の人で他に障害の少ない人では要支援1程度、中には非該当と出るケースも出てきています。さらに軽度者切り捨て政策で要支援者のホームヘルパー・デイサービスの保険外しが2015年からの第6期計画で進められています。その受け皿である地域支援事業の日常生活支援総合事業(注⑤)は、チェックリストや事業内容を見ても視覚障害者に対応できるものにはなっていません。2015年の報酬単価の引き下げで福祉労働者が不足しています。
2 障害者総合支援法
 国民の反対を押し切って強行成立され、2006年に施行された障害者自立支援法は11年を迎えました。この間、応益負担の部分は国民運動の下、再三見直しをされ現在9割以上の人が福祉サービスの一部負担はありません。
 2014年に施行された障害者総合支援法は、ほとんど自立支援法からの内容を受け継ぐものであり、負担でいえば応能的性格を持つ応益負担になっています。但し、法7条(注⑥)の「介護保険優先原則」はそのまま引き継がれています。2015年からは相談支援専門員によるサービス等利用計画が必須となりました。契約や計画などはさらに事務手続きが煩雑になりました。
 2016年の「施行3年を目途とした見直し」は、一部軽減策は導入されるものの介護保険優先原則を固定化する危険性があります。
3 我が事丸ごと地域共生社会と包括ケア(注⑦)
 地域ケア会議が各自治体や校区で始まりました。自助・自立の考えが先行しており、高齢や障害の人の地域生活を保障するものにはなっていません。
 もともと社会保障費の軽減の為に作られた策ですが、住民がいかに地域づくりに関わっていくかが重要になってきます。つまり、「作る側」に入ることが肝心です。

第2節 そこから起こる課題

1 危険な風潮
 各自治体での地域包括ケアの議論では、「地域移行」という言葉が使われ、入所から在宅への露骨な移行施策が推し進められています。
 このような入所する事や公的なサービスを受ける事がさも悪いような風潮から脱却し、必要な所へ必要な保障をと言える仕組みを作っていかなくてはなりません。
2 利用負担制度
 介護保険制度が1割負担、障害者総合支援法でも住民税非課税者への無料制度はあるものの基本的には定率負担制度です。それにより、利用の差し控えが起きています。
 さらに2018年度からは、介護保険が3割負担との検討がなされています。
3 障害支援区分
 2014年からの総合支援法施行にあたり、障害程度区分から障害支援区分へと変わりました。これにより、障害によっては今までより重く判定される傾向にあります。新しい支援区分では、全盲でまず2、そして日常生活の障害を加味して3や4と出る人もいます。
4 勘案と給付決定
 区分が上がることにより利用料金が上がったという人も出ています。例えば同行援護1時間未満では、身体介護なし199単位が、身体介護あり405単位になった、などの例があります。
 ここで問題なのが支給決定プロセスです。障害支援区分で機械的に給付決定するのではなく、利用者本人のサービス利用意向等を勘案して定めることになっています。
(法22条)(注⑧)
5 専門性の要る計画相談支援
 計画相談支援事業が始まりました。にわか仕立ての相談支援専門員によりサービス等利用計画が立てられています。問題なのは、視覚障害のことを熟知した相談支援専門員が少ないことです。
 中途視覚障害の方は、本人自身がどんなサービスが必要か分からない人がほとんどです。「人生を諦めている」「障害を隠している」「支援を受けることは罪」と、考えている人がいます。深く細やかなマネジメントが必要になってきます。
6 人材問題
 2015年の報酬単価の引き下げにより、福祉労働者の現場離れがますます進んでいます。特別養護老人ホームの職員不足が起こっており、入所定員を引き下げざるを得ない施設も出てきました。それを補うため、外国人ヘルパーの導入が行われており、文字の読み書きなど視覚障害者への支援において問題が起きてきています。
 一方、在宅事業では、視覚障害者の家事援助や同行援護は報酬単価が低く、職員不足と質の低下の問題が指摘されています。
7 地域のマンパワー
 「地域の支え合い」が言われている一方、有償・無償のボランティアが減少しています。公共図書館・点字図書館の点訳・音訳ボランティアの減少、対面朗読奉仕者の高齢化も憂慮されています。
8 読み手派遣事業
 読み手派遣事業は地域生活支援事業に位置付けられており、政令指定都市や中核市での実施はまだなく、実施自治体はわずかです。制度の広がりのためには、大きな都市での運動が鍵になります。
9 地域資源の発掘・発展
 地域力が弱くなっているといわれる中、地域の努力により、福祉有償運送(注⑨)、音訳や点訳サークル、ガイドボランティア活動、書籍やPDFのテキスト化などの事業が広がっています。しかし、地域差が激しく、また、財政的にも運営の厳しい所がほとんどです。

第3節 視覚障害者にとっての福祉介護の65歳問題

1 65歳になった時の課題
 総合支援法で福祉サービスを利用していた人が65歳になり、「ヘルパー申請をしたら支給時間が減った」「利用料金が上がった」などの声が全国から聴かれます。
2 65歳以降も続く課題
 今までホームヘルパー利用をしていなかった人が、奥さんが急に入院し、冷蔵庫の中も分からないのに週1~2回では生活できないなどの声も聴かれます。このように65歳問題は65歳以降も続く課題です。
3 質的な課題
 要介護の場合は、買い物は身体介護で同行しますが、要支援の場合は時間が短いので買い物は代行になります。「銀行は代行できない」と言われる場合もあります。
 障害者総合支援法では出来た家族のための買い物や調理は、介護保険下では許されません。
4 取り扱い通知と事務連絡
 介護保険や地域支援事業で足りないサービスは、総合支援法のサービスの横出し・上乗せが可能です。(平成27年3月31日、「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」)(注⑩)
 この通知が、地域によって生かされている所、不充分な所、まったく生かされていない所など様々です。通知を生かしている例では、介護保険給付の上に足りない部分を上乗せしている例、給付内容によって介護保険のヘルパーは利用せず総合支援法のホームヘルパーを給付している例、内容によって法を使い分けしている例などあります。
 障害のある人と多くの国民の運動により、2015年2月に厚労省は各地の調査結果を基にした事務連絡の中で、「介護保険利用前に必要とされていたサービス量(ヘルパー時間など)が、介護保険利用開始前後で大きく変化することは一般的には考えにくいことから、個々の実態に即した適切な運用をお願いしたい」としています。

第4節 根本の問題

1 労災や保険優先主義と生活保護
 総合支援法7条において「優先」と書かれている介護保険が、下位である障害者福祉制度(障害者総合支援法)より利用負担が高く、給付時間も短いことから、「いわゆる65歳問題」が発生してくるわけです。
 それぞれの制度を守り発展させていく運動と共に最後の受け手である生活保護の基盤を守る国民的運動が社会保障を発展させていく上で大切です。
2 介護保険法と障害者総合支援法は双子の兄弟
 介護保険法と障害者総合支援法の基本構造は、①給付金方式(サービスの給付ではなく費用の支給) ②直接契約方式 ③応益負担 ④ケアマネジメント方式 ⑤地域支援事業 が共通した特徴であり、財源の違い、すなわち、介護保険が社会保険方式、総合支援法は全額公費の税方式であり、国は、障害者制度も保険方式にすることで、保険料を若い人から徴収することを目論んでいます。
 2015年のサービス等利用計画方式という名前のマネジメントが採り入れられたこともこの基本構造が同じであり、国が介護保険と総合支援法との統合を諦めていないことを示しています。
3 現金給付方式
 先に上げた給付金方式は「現金給付方式」とも呼ばれ、それまでの福祉の現物給付とは大きく構造が異なるものです。例えば、要介護者への給付は、居宅介護サービス費の一部を給付するものです。それにより、介護や福祉サービスが商品化され、営利企業の参入を許す仕組みになっています。
 その問題点は、
 (ア)事務手続きが極めて煩雑であり、視覚障害者その他の障害の人も契約、署名、捺印などの作業が常に付きまとう。
 (イ)要介護認定や障害支援区分認定など、常に認定作業が必要。
 (ウ)儲からないと事業者は手を引く。
 (エ)要介護認定や煩わしい手続きなどに無駄な経費がかかる。
など、視覚障害者には使いにくいシステムです。
4 社会保障の一体「改革」
 「税と社会保障の一体改革」が叫ばれていますが、少なくとも、介護保険と障害者総合支援法等をめぐる、税の使い道と財源については、次のように分析しています。
 1.軍事・大企業優先政策により社会保障費はOECD加盟国で最低の割合になっている。
 2.「川上から川下への路線」により、医療から介護・福祉へと安上がりな労働力に置き換わる施策が講じられている。
 3.本来、医療保険で行なわなければならない医療の部分を介護保険の財源で賄う仕組みである。そのため、介護や福祉へ回す財源が足りなくなっている。
 4.障害者福祉との統合は、20歳から保険料を徴収する仕組みであり、障害者福祉を充実させる仕組みにはならない。
 5.今後、高齢で重度者が増すにつれ、増大する医療費を介護保険で賄う仕掛けである。つまり、国民からの保険料で賄い、国からの財源支出を抑える仕組みになっている。
 6.介護や福祉を公的責任から離し、有償・無償ボランティアに置き換える仕組みである。
 7.介護や福祉の商品化は、社会福祉の変質であり、それに対する社会福祉法人の公益性を守る闘いが必要である。

第3章 視覚障害者の権利としての介護・福祉を守り進める大作戦

第1節 基本方針

 1.介護や福祉の保険化に反対し、高齢者・障害者総合福祉法(仮称)の制定をめざします。
 2.国が責任を持ち、必要なところへは必要な給付ができる現物給付制度に基づく総合福祉法とすること。
 3.障害者総合支援法第7条の「介護保険優先原則」を撤廃すること。

第2節 当面の要求の骨子

「介護保険制度および障害者総合支援法」
 1.介護保険と障害者総合支援法の統合は行なわないこと。
 2.介護保険および日常生活支援総合事業利用の一部負担制度を廃止すること。
 3.障害者総合支援法による利用料金の一部負担制度を廃止すること。
 4.障害者総合支援法と介護保険法のサービスを任意に選択できる制度にすること。
 5.「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」(平成27年3月31日)(注⑩)を、実効あるものにすると共に、法に盛り込む改正を行なうこと。
「契約」
 6.利用契約制度について、自治体が責任を持って施行することを求めつつ、契約にあたっては、視覚障害者に分かる情報媒体を必ず用意すること。点字、大活字、録音、電子メールなど。
 7.契約事務の署名については代筆、簡単なサインなどでも可能とすること。
 8.視覚障害者の利用に際して契約を拒否しないこと。
「計画作成および専門性」
 9.介護保険のケアマネジメントや、障害者総合支援法での計画相談支援事業では、視覚障害の特化した課題に対応するために、視覚障害について熟知したマネジメントが出来る人を養成すること。特に、情報保障のマネジメントが出来る専門員を養成すること。公務員によるマネジメントを可能にする事。
 10.セルフマネジメントは、書き込み支援、パソコンや、点字での書き込みを認めること。
 11.在宅視覚障害者に対してニーズを引き出し、社会自立に向かうマネジメントやコーディネートをする人材や、システムを作ること。
 12.ケアプランやサービス等利用計画は、視覚障害者が分かる媒体で提供すること。
「認定および専門性」
 13.要介護認定と障害支援区分認定については廃止し、ニーズに基づいた計画策定をすること。
 14.弱視の見え方の特性や、点字やパソコン習得などを特に聞き取ること。
 15.調査員は、視覚障害の生活を熟知した人にすること。特に、情報入手手段について聞き取りが出来る人にすること。
「同行援護」
 16.制限を緩和し以下の場合の同行を認めること。
 ①医療機関での院内介助
 ②通勤介助、通学介助、
 17.同行援護は、質の良いヘルパーを担保するため、賃金保障制度を確立すると共に、日本中どこでもいつでもニーズがあったら派遣できる制度にすること。
 18.同行援護・家事援助については、地震や台風など自然災害の時や、その後の援助など、緊急の場合の対応が出来るようにすること。
 19.同行援護などの外出支援時に、ヘルパー事業所の車両を利用出来るようにすること。
 20.同行援護・家事援助については、天候悪化や利用者の体調不良などの緊急時の対応として、柔軟な運用ができるシステムにすること。
 21.入所における在宅サービスの利用
 (1)総合支援法施設でも、入所時、帰省の日、入所と支援費が重なる日でも同行援護などの移動支援制度が利用できるようにすること。
 (2)高齢者住まい法(有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅)による施設、軽費老人ホーム、特定施設においても同行援護などの総合支援法制度を利用出来るようにすること。
 (3)養護老人ホームなど、措置施設での同行援護などを利用出来るようにすること。
 22.救護施設での同行援護を認めること。
「移動保障」
 23.福祉有償運送や過疎地有償運送、デマンド交通などを視覚障害者に分かる媒体で伝えること。
 24.福祉有償運送や過疎地有償運送を起業しやすい制度にすること。
「総合支援法施設」
 25.視覚障害専門のグループホームや生活介護、就労支援施設を作ること。
 26.入所施設支援では、視覚障害支援に専門性のある相談支援専門員や職員を配置すること。
 27.視覚障害者や視覚障害重複者が入所やグループホーム利用の際、断られないようなシステムをつくること。
「施設入所及びグループホーム」
 28.養護老人ホームと盲特別養護老人ホームの建設を、目標を立て飛躍的に増やすこと。
 29.盲養護老人ホーム入所に関して措置控えにならないようにすること。また、必要な視覚障害者に紹介出来るようなしくみを作ること。
 30.視覚障害者には所得や住居などの要件を緩和し、必要な視覚障害者に盲養護老人ホームが措置出来るようなしくみを作ること。
 31.軽費老人ホームや、サービス付き高齢者住宅・有料老人ホームに、視覚障害に特化した対応の出来る職員配置や施設整備をすること。
 32.障害者総合支援法において、視覚障害専門のグループホームを立ち上げられるようなしくみを作ること。
 33.障害者総合支援法によるグループホームに、65歳を超えてからでも入れるようにすること。
 34.一般型の養護老人ホームから盲養護老人ホームへのように、入所の後、視覚障害になった場合の措置替えを行ないやすくすること。
 35.特別養護老人ホームの入所基準を緩和し、在宅生活が困難な視覚障害者が入所しやすくすること。
「介護保険と専門性」
 36.介護保険によるホームヘルパーは、視覚障害者への支援は基本知識として持ち得ること。
 37.介護保険によるデイサービスは、視覚障害者が参加しやすいものも作り、視覚障害者が地域で選択出来るようにすること。
 38.介護保険に関わるスタッフは視覚障害に関する専門性に関し、障害者制度による支援が必要かどうかの目と構えを持つこと。その場合、速やかに障害者制度へのマネジメントが行なえるシステムにすること。
「情報保障」
 39.音訳者派遣制度を地域生活支援事業の中で必須事業とすること。
 40.文書の読み書き説明などが出来るホームヘルパーを育成すること。
 41.医療や健康等の情報提供をきちんと行なう為、読み書き支援員の養成および派遣制度を確立すること。
 42.テキストデイジーおよびマルチメディアデイジーの作成に関して、情報保障の観点からデータ制作の支援者の養成も意思疎通支援事業に組み入れること。
「日常生活支援総合事業」
 43.地域支援事業における基本チェックリストにおいては、該当・非該当に関わらず、ニーズに応じて障害福祉サービスをマネジメントできるしくみとすること。
 44.基本チェックリストやアセスメントにおいて、視覚障害による対応や施策を常に把握し、マネジメントできるようにすること。
 45.第1号事業に、視覚障害者への読み書き支援、移動支援メニューを明確化すること。
「災害」
 46.大規模災害時においては、視覚障害者に特化した支援員および視覚障害生活訓練指導員の派遣体制を組むこと。また、災害救助法における専門員派遣にこれらの職種を位置付けること。
「地域マンパワー」
 47.点訳サークル、音訳サークル、ガイドボランティアサークルなど、地域を支える活動が行ないやすい仕組みにすること。
「リハビリテーション」
 48.視覚障害生活訓練指導員・歩行訓練士の増員と活動保障を行うこと。
 49.眼科と連携して障害児支援利用計画を立てるシステムを作ること。また、眼科でのスマートサイト(注⑪)・中間型アウトリーチ(注⑫)を行うこと。

第3節 実現に向けての運動

 1.利用運動…介護保険法、障害者総合支援法による制度を知り、利用することを進めます。
 2.不服審査…介護保険法、障害者総合支援法による行政処分に対しては、異議申し立て、審査請求運動を大胆に行なっていきます。
 3.裁判…不服審査請求が認められなかった場合、裁判に訴えていきます。
 4.必要なサービスが得られないとき、懇談会や要求運動、法的対応など、皆で支援できるようにします。
 5.調査・研究…福祉・介護・生活実態に根ざしたアンケート調査などを進めます。
 6.政府・自治体…全視協と社員は、政府・国会、地方自治体、事業者に対しての行動を進めます。
 7.手をつなごうすべての視覚障害者要請行動などに取り組みます。
 8.障害者団体…視覚障害者団体、他の障害者団体との共同行動を進めます。
 9.他の福祉分野…医療・介護・生活保護・年金・子育てなど、福祉全体の底上げのため、他分野と連帯し共同行動に取り組みます。
 10.国民…国民的な合意を得ながらの共闘運動を進めます。
 11.憲法…日本国憲法を守る広範な国民運動と連携して進めます。

おわりに

 社会保障費の抑制施策としての介護保険法成立から17年。「天下の悪法」と言われた障害者自立支援法成立から11年が経ち、大介護時代の幕開けの節目でさまざまな矛盾が噴出してきています。
 それは、国連の定める障害者の権利条約の締約国にふさわしい国内法の整備がきわめて不十分であるからと言わざるを得ません。
 介護・福祉の65歳問題。この65歳問題はすでに介護保険第2号被保険者である40歳から始まっています。と同時に、65歳を超えた障害のある人の人権保障の課題です。
 大きく国民と手をつなげば解決できる課題です。また、そうでなければ未来はありません。
 今こそ私たちは団結し、裁判や不服審査請求など各地で火の手の上がる運動をしていこうではありませんか!一緒に未来に向かってスクラムを組んでいきましょう!

(付録) 用語解説

①「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部
 2016年7月、厚生労働省は塩崎厚労相をトップとする「地域共生社会実現本部」を発足させました。発足に際し、塩崎厚労相は「高齢者に限らない地域包括ケアを構築する。日本がかつて持っていたコミュニティの強さを取り戻す」と発言。さらに、公的福祉サービスを「これまでの縦割りを『丸ごと』に変える。福祉の哲学のパラダイムシフトを起こす」と力説しました。
 「地域共生社会実現本部」の設立趣旨には、「『他人事』になりがちな地域づくりを地域住民が『我が事』のこととして主体的に取り組んでいただく仕組みを作っていくとともに、市町村においては、地域づくりの取り組みの支援と、公的な福祉サービスへのつなぎを含めた『丸ごと』の総合相談支援の体制整備を進めていく必要がある」と、あります。
(以下、特定非営利活動法人 日本障害者協議会の第1次意見より引用)
 …… そのねらいは、高齢者・子どもなどの福祉と医療を地域単位で一元化していく、いわば「地域包括ケア」をめざすものとされている。この政策について、地域福祉という視点や谷間を生み出す縦割りの廃止などの理念的な側面では評価できる点もあるが、全体的には公的責任の後退、地域での支援サービスの縮小と質の低下、地域格差の拡大が確実に予測されるものと考える。福祉も介護も、再び家族責任・家族依存の時代に戻ってしまう恐れがある。
 この政策は、介護保険制度の破たんと社会保障費・医療費の大幅不足を理由に、財政論に強く影響されて生まれてきたことを指摘しておきたい。
②鉄道駅に関するアンケート調査結果(日盲連HPより引用)
 回答者の傾向として男女比は男性に若干片寄っています(男性67.6%)。視覚障害の程度は全盲者に片寄っており、弱視(ロービジョン)の回答者が少ないです(全盲63.5%、弱視32.0%)。
 ・「回答した視覚障害者の31.5%が駅ホームからの転落経験があった」
 ・「いつも利用している駅(72.9%)で転落をした回答者が多かった」
 ・「転落した原因は勘違いをした(72.9%)や方向性を失った(52.9%)など、方向を確認出来ないことが原因となる傾向があった」
 ・「転落した駅はいつも利用している駅(72.9%)で転落をした回答者が多かった」
 ・「安全性の確保に必要な内容は、ホームドアの設置や駅員の増員など“外部的要因”を指摘する回答者(平均77%)が多かった。ただし、歩行訓練のように視覚障害者本人に関わる内容(内部的要因)を指摘する回答者(63.5%)も多かった」
 ・「ホーム上で困ることは、『点字ブロックの上に荷物を置く(89.3%)』と『スマートフォンの操作をしている人とぶつかる(79.0%)』が多く、視覚障害者では安全回避が出来ないことに対して不満が強い傾向があった」。
③視覚障害者の駅ホームにおける転落死亡等事故のまとめ(1994年12月以降これまで)
 ※ 以下、発生年、転落死亡、転落重傷、接車死亡、接車重傷の順。単位は件数。
 1994 1 0 0 0
 1995 3 1 0 0
 1996 2 1 0 0
 1997 1 1 0 0
 1998 1 0 1 0
 1999 3 2 0 0
 小計 11 5 1 0
 2000 0 1 0 0
 2001 1 2 0 0
 2002 0 1 1 0
 2003 1 4 0 0
 2004 2 1 0 0
 2005 0 1 0 0
 2006 0 0 0 0
 2007 0 1 0 0
 2008 1 2 0 1
 2009 0 1 0 0
 2010 0 4 0 0
 2011 3 3 0 0
 2012 2 4 0 0
 2013 0 1 0 0
 2014 1 1 0 0
 2015 1 0 0 0
 2016 2 1 0 0
 2017 1 0 0 0
 小計 15 28 1 1
 合計 26 33 2 1
④視覚障害者の職域優先を定めたあはき法第19条を堅持し、晴眼あマ師養成施設の新設を阻止する
取消訴訟の概要
 平成医療学園グループ(岸野雅方理事長)は、2016年7月、福島医療専門学校、横浜医療専門学校、平成医療学園専門学校及び宝塚医療大学のあマ指師(あマ指師)学校・養成施設の認定申請を国が先に非認定としたことを不服として、その取消を求める訴訟を、仙台・東京・大阪地裁に起こしました。 
 原告は、国が非認定の理由としたあはき法第19条の視覚障害者であるあマ指師の職域優先は、あはき法19条1項は違憲・無効であり、これを理由とした非認定処分は取り消されなければならないとし、併せて、憲法22条1項(職業選択の自由)違反、憲法31条(適正手続きの保障)違反、憲法13条(幸福追求権)違反を主張しています。
 裁判は、視覚障害者の業権と、学校設置の自由(職業選択の自由)との権利のぶつかりあいとなり、数年にわたる戦いとなるが結果次第では、視覚障害者に壊滅的な打撃を与えるものとなるだけに、視覚障害者団体の垣根を超えた運動(あん摩師等法19条連絡会)の総力を上げた闘いが広がりを見せています。
運動の取り組み
 1.裁判対策本部を設置し本部長、仙台地裁担当、東京地裁担当大阪地裁担当ヲ置き傍聴者の動員などに組織的に取り組んでいる。
 2.新聞各社・裁判長宛葉書普及と、投函運動を呼びかけている。
 3.あん摩師等法19条連絡会の取り組みと結成に参加するとともに、点字民法あはき特集号を発行し各地で学習に取り組んでいる。
⑤ 介護予防・日常生活支援総合事業
 運動器の機能・口腔機能の向上プログラムなどに相当する介護予防については、介護予防・生活支援サービス事業として介護予防ケアマネジメントに基づき実施
○予防給付のうち訪問介護・通所介護について、市町村が地域の実情に応じた取組みができる介護保険制度の地域支援事業へ移行(29年度末まで)。
○既存の介護事業所によるサービスに加えて、NPO、民間企業、ボランティアなど地域の多様な主体を活用して高齢者を支援。高齢者は支え手側に回ることも。(以上、厚労省HPより引用)
 しかし、これらの切り捨ては、「保険原理」を否定する事態となります。
 視覚障害単独の場合、もともと要支援1か2しかならないため総合事業では、障害を補うことはできません。
⑥ 法7条
 障害者総合支援法7条には、「介護保険が総合支援法より優先」の記載があります。
 第7条 自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法(平成9年法律第123号)の規定による介護給付、健康保険法(大正11年法律第70号)の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付又は事業であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受け、又は利用することができるときは政令で定める限度において、当該政令で定める給付又は事業以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において、行わない。 
 しかし、これらの切り捨ては、「保険原理」を否定する事態となります。
 視覚障害単独の場合、もともと要支援1か2しかならないため総合事業では、障害を補うことはできません。
⑦ 地域包括ケアシステム
 厚労省においては、「2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。」と、報道されていますが、国の福祉・医療・介護の給付抑制策です。 ⑧ 法第22条
 障害のある人の状況や家族・環境、ニーズなど勘案して内容や量の支給する旨を述べています。
#REF!  第22条 市町村は、第20条第1項の申請に係る障害者等の障害支援区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該障害者等の置かれている環境、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下この条及び第27条において「支給要否決定」という。)を行うものとする。 
⑨ 福祉有償運送
 NPO等が自家用自動車を使用して、身体障害者、要介護者の移送を行う、「自家用有償旅客運送」の一つである。現在では、道路運送法第78条第2号[1]に該当する。同行援護事業も行っている事業所も多く過疎地での移動支援には便利です。
⑩ 自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について
 介護保険実施直前の平成12年3月から、障害者制度と介護保険制度との関係について取り扱い通知または読み替え通知として何度か出されています。
 平成19年3月通知は、①必要なサービスが介護保険にない ②地域に介護保険施設やサービス量が確保できない ③量的に介護保険では足りない場合に障害者制度が利用できる旨の通知です。
 日常生活支援総合事業施行前の平成27年3月通知には、「介護保険サービスに係る保険給付」のところに「介護保険サービスに係る保険給付又は地域支援事業」と変わりました。つまり、「日常生活支援総合事業でも足りない場合に障害者制度の方へご相談ください」ときたわけです。
⑪ スマートサイト
 ロービジョンケアの存在を知らせる啓発用資料を作成し、それを眼科医が視覚障害のある患者に渡すことを推奨するものです。患者は資料からロービジョンケアの概要を知ることができ、そこに掲載されたホームページにアクセスすることでより詳細な情報を得ることが可能となります。ロービジョンケアの知識が乏しい眼科医であっても実行可能な情報提供手段を公的に提供していること、情報提供を眼科医の責務と位置付けていることが画期的といえます。その後日本では県単位で徐々に広がりつつあります。
⑫ 中間型アウトリーチ支援
 視覚リハに関する専門職が、視覚障害当事者が日常よく訪れる各種施設(眼科など)に出向いて視覚リハに関する相談や情報提供を行うことです。
 従来型のアウトリーチ(自宅訪問)と通所型の視覚リハサービスの中間型で、視覚障害当事者にとっては通い慣れた場所で視覚リハに関する専門的な相談を受けることができ、福祉側にとってはニーズを持った当事者に接触できる仕組みです。

(この稿、終わり)