2021年10月10日 更新
目次と主な記事をお知らせします。
JR駅無人化反対訴訟をご存じですか
山城完治(東京)
ひと 「わたぼうし大賞」を頂きました
伊佐 勉(千葉)
得がたい友人、かけがえのない同志
藤野高明(大阪)
障害者自立支援法違憲訴訟団主催の
「自助の強要は人権を脅かす!」オンラインシンポジウムに参加して
田中章治(東京)
全視協女性部から「絵本のプレゼント」のお知らせ
会員紹介 奥田理恵子さん(東京)
総務局コーナー
1 全国委員会
2 頒布会
全国と地域の主な予定
(目次、終わり)
山城完治(東京)
駅の無人化で移動の自由が侵害されたとして、大分市内の車いす使用者3人がJR九州に損害賠償を求めている訴訟(JR駅無人化反対訴訟)は、大分地方裁判所において、3回(21年2月4日・5月13日・8月26日)の口頭弁論が行われました。この裁判の状況について、JR駅無人化反対訴訟を支援する会(支援する会)にいただいた資料などを参考にまとめてみました。
この裁判は、被告であるJR九州が大分市内のJR日豊本線牧駅、豊肥本線敷戸駅、同大分大学前駅を無人化したことについて、これらの駅を利用する車椅子使用者である原告らが、「憲法13条などによって保障された移動の自由を侵害する不法行為である」として損害賠償を求めているものです。
第1回口頭弁論では、原告の吉田春美さんが障害当事者として、無人化によって事前の予約が必要になるため、当日の時間や利用駅の変更ができない。高城・鶴崎・大在・坂ノ市・中判田の5駅の無人化の白紙撤回を求めました。
第2回口頭弁論で原告の宮西君代さんは、これまでは駅に行きさえすれば駅員さんに手伝ってもらって普通に乗れたのが、無人化で前日の夕方までの電話予約が必要になった。1人で電話ができず、聞き取りが困難な私の場合、人に頼まなければならない苦痛や、時刻に縛られる苦痛はとても大きい。私たちは、公共交通機関を利用して、街に出て行き、私たちの存在を知ってもらい、理解し合い、市民みんなでやさしいまちづくりを進めてきた。気軽に街に出て行く権利を奪い、社会参加を著しく制限し、共生社会の後退につながる駅の無人化に断固反対する、と述べました。またJR九州は、「一民間企業で、法的には障害者に対する合理的配慮の責任を負わない」と反論しているが、原告代理人の松尾康利弁護士は、「JR九州は株式上場時に、税金で設けられた3877億円の経営安定基金を資産に組み込んだだけでなく、青柳社長は国会で「九州の鉄道ネットワークの維持は当社にとって重要な役割」「今後とも安全を最優先にした経営に努める」と答弁していることを示し、赤字が見込まれる鉄道事業を維持するための基金をもらって、赤字になりそうだから無人化させてくださいというのはおかしい」と指摘しました。
第3回口頭弁論で代理人の森脇宏弁護士は、移動する権利は憲法13条の幸福追求権と22条の居住・移転の自由を根拠として保障されており、それは仕事などの経済活動だけでなく、交流や見聞を広めたり、人生を楽しんだりする上で無くてはならない権利だと主張。障害のある人にとってこの権利は、障害によって受ける制約(障壁)が取り除かれない限り保障されたとは言えないし、原告のように事前の予約や調整なしに利用できなくなったこと、予定通りに行動できなければ利用できない状態は、「移動の権利」が保障されていると言えるか、と問いかけました。さらに、原告のような重い障害がある人におけるJR等の公共交通機関の利用は、単なる移動手段ではなく、利用すること自体が、喜びや達成感を感じたり、人と交流したり、自分らしく生きる手段として極めて重要なものであると主張しました。
支援する会は、合わせて5月に全国から寄せられた署名、「JR駅無人化に対する損害賠償請求裁判の徹底審理を求めます」3万9536筆を大分地方裁判所に提出しています。
JR九州は、
と反論しています。
上記のJRの主張を跳ね返すために、支援する会は、原告のより具体的な利用状況やSSSの対応・体制などの検証に取り組むとともに、さらなる署名、支援する会への入会(年会費1千円)を呼びかけています。
JR駅無人化反対訴訟を支援する会
(この稿、終わり)
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